研究計画書の具体例(経済学)

日本大学院の研究計画書

研究計画書の書き方について 研究計画書は、研究の背景や動機、研究の目的等を明らかにする書面です。現段階での修士論文のイメージを研究計画書に表現してください。研究計画書には以下の様な項目 を記入することが求められます。

研究計画書

○○大学 経済学部 ○○学科 4年生 ○○

研究テーマ

量的金融緩和政策の実証分析

要旨

近年わが国日本ではデフレ脱却、景気回復を目指す政策手段として大胆な金融緩和政策が注目されており、量的金融緩和の実体経済への有効性の有無が盛んに議論されている。この機運の中、2013年4月日本銀行は明確な物価目標を伴った「質的・量的金融緩和」を発表した。だが量的金融緩和の実体経済への効果と波及経路について、研究者間の見解は分かれている。本多他(2010) では2000年代の日本銀行による量的緩和の実証分析結果として株価上昇、生産増加などの効果は検証されたが、物価上昇との関係は検証できなかった。しかし黒田日銀総裁による「質的・量的金融緩和」は、現在までに株価上昇や円高修正に成功したものの、最終的には物価への波及を目標にしている。

本研究では未解明の問題としてゼロ金利下での量的金融緩和が物価上昇を起こし得るのか、物価上昇に効果があるとするとその条件は何かを追究する。その際のポイントとして、マクロ的な需給ギャップと物価変動の関係に注目する。本研究はFRBによる量的緩和(QE)、日本銀行によって2001年から2006年に行われた量的緩和、2010年末に採用された「包括的な金融緩和」以降の量的緩和を対象とし、回帰分析やVARモデルを用いてその効果を比較、分析するつもりである。

背景

2007年サブプライムローン問題に端を発する金融危機により、米国は深刻な不況に陥りデフレリスクに直面することとなった。これに対応するため2008年11月FRBは量的緩和QE1を発表し、米国債3000億ドル、MBS1.25兆ドル、その他1750億ドル、計1.725兆ドルを買入れる大規模な金融緩和を行なった。その後もFRBは追加的に量的金融緩和を採用してきた。現在FFレートは0-0.25%で推移し、マネタリーベースは危機以前と比較すると3倍程度まで拡大している。

日本銀行も国内景気後退に対応して2010年10月に「包括的な金融緩和政策」を採用し、日銀当座預金残高を20兆円から2013年初頭には45兆円を超えるまでに増加させた。2013年4月には通称異次元緩和とも呼ばれる「量的・質的金融緩和」を発表した。これは発表当時138兆円あるマネタリーベースを2年間でおよそ2倍の270兆円まで増加させることで、景気浮揚効果および2%の物価安定目標の達成を目標とする。これらは過去の量的緩和と比べると、購入対象とする金融資産の範囲とその購入規模を拡大するなど、従来よりも拡張的な金融緩和である。このより緩和的な金融政策により、2013年6月時点でマネタリーベースは160兆を超え、日銀当座預金も70兆を超えている。

2007年世界金融危機以降、先進各国の中央銀行は政策目標を従来の「金利」から「量」へと変更し、また明確な物価目標を掲げるなどコミットメントを強化することで非伝統的と呼ばれる金融政策を積極的に導入してきた。現代において非伝統的金融政策の効果を明らかにすることの意義は非常に大きいと思われる。

量的緩和の効果

2001年から2006年の量的緩和を対象に先駆的に実証分析を行ったのがHonda他(2007)である。 本多他(2010)ⅱのVARモデルを用いた分析結果をまとめると、量的緩和ショック(日銀当座預金残高の増加)は株価を上昇させ、株価経路を通じて生産高を増加させた。一方で消費者物価の反応は非常に小さく、量的緩和が物価に作用するほどの有意な結果は得られなかった。名目金利に関しては正の反応が観察され、それは長期の金利になるほど大きな反応を示した。これは量的緩和が名目金利(特に長期金利)を上昇させたことを意味する。また為替レートの若干の減価と、銀行貸出の減少が観察された。

ポートフォリオ・リバランス効果

ポートフォリオ・リバランス効果とは、国債買入れによって民間セクターに貨幣を供給することで、貨幣と不完全代替の関係にある金融資産に資金が向かう効果のことである。
本多他(2010)による実証分析では、量的緩和は株価を上昇させ、それが生産高の増加に繋がる結果が得られた。他方鵜飼(2006) ⅲがサーベイした研究ではこの効果に関して有意ではない、もしくは存在しても効果が小さいという結果が得られたとしている。しかしこのサーベイは2000年以前のデータを含めた実証分析の結果であったため、量的緩和の政策効果が抽出され難かった可能性が考えられる。

中澤・吉川(2011)ⅳ はポートフォリオ・リバランス効果に関して量的緩和当時の日本銀行のバランスシートを分析した結果、長期国債のネット買入れが2004年以降大きく減少したこと。買入れた長期国債の残存期間「1年超3年以下」の長期国債が中心であったこと。さらに保有国債の平均残存期間が短期化したことから、当時の量的緩和はポートフォリオ・リバランス効果が発揮されにくい形で行われた可能性があると指摘している。

物価変動の要因

西崎他(2011) ⅴによれば、物価変動の要因は3つに分類できる。第一の要因は、予想インフレ率の変動である。中長期的な期待インフレ率は、インフレ率が決定される際のアンカーであるため、その変動はインフレ率の趨勢的な変動に繋がりうる。第二の要因は、需給ギャップの変動である。これは景気循環に伴う物価変動である。第三の要因は、その他の要因の変動である。

マクロ需給ギャップと物価の変動

西崎他(2011)を踏まえ、現在の日本における物価変動の要因のひとつに実体経済的要因であるマクロ需給ギャップが重要な役割を果たしていると考える。実際に日本においてインフレ率と需給ギャップの相関は高いことは確認されており、過去のデータを照らし合わせると需給が逼迫している時期はデフレの緩和または弱いインフレが見られ、需給が緩和している時期にはデフレの傾向が観察される。これよりマイナスの需給ギャップを縮小、または解消することではじめて量的金融緩和は物価上昇効果をもたらすだろうと考えられる。

研究対象および方法

本研究では実体経済的な要因としてマクロ需給ギャップを加え、量的緩和とマネタリーベースの増加、需給ギャップの変化、物価の変化の関係性を明らかにしたい。

分析手法は回帰分析やVARモデルを用いた実証的分析である。分析対象はFRBによる量的緩和(QE)と、日本銀行による2001-06年の量的緩和、2010年以降の量的緩和を対象とする。米国と日本における量的緩和の比較分析も行い、より精緻な研究を目指す。

参考文献

  • ⅰ本多祐三・黒木祥弘・立花実(2010)「量的緩和政策―2001年から2006年にかけての日本の経験に基づく実証分析」財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成22年第1 号
  • ⅱ 白塚重典(2009)「わが国の量的緩和政策の経験:中央銀行バランスシートの規模と構成を巡る再検証」日本銀行金融研究所No. 2009-J-22
  • ⅲ鵜飼博史(2006)「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」日本銀行ワーキングペーパーシリーズNo.06-J-14
  • ⅳ中澤正彦・吉川浩史(2011)「デフレ下の金融政策:量的緩和政策の検証」財務省財務総合政策研究所研究部No.11A-03
  • ⅴ西崎健司・上野陽一・田中正宏(2011)「日本の物価変動の背景:事実と論点の整理」日本銀行ワーキングペーパーシリーズNo.11-J-9


他の参考事例

早稲田に入学した学生さんの志願時の研究テーマをご紹介します。また研究計画を参考までに数例紹介します。ご紹介する研究計画は、入学者の方の中から無作為に選んでいます。

研究計画1(PDF)
研究計画2(PDF)
研究計画3(PDF)

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